学生


2000年 2273×1818mm
2000年 2273×1818mm

あめもよう・でんでんむし

 

雨模様電電虫。

雨で霞んだ電気街に群がった人々が、青になるのを待っています。

ネオンやお店の明りが綺麗に霞む中、ゆっくりと増えてゆく。

どこからともなく現れるその人間が

なにか違った生き物の様で

雨音と歪んだ光の中

不思議な感覚に包まれたのを覚えています。


時代の最先端をゆくこの街にも雨は降ります。

上空に歪んで光るネオンが綺麗だから

電電虫はここへ集まるのではないでしょうか。

私もその一人です。

 


2000年 2273×1818mm
2000年 2273×1818mm

R16

国道を走る乗り物は全て

路地裏で見るものとは

まるで違う。

 

凶器に見えてしまうほど

その塊は

早い。

 

パンでもかじりながら

ハンドルを間違えたトラックは

いとも容易く

歩道を貫く。

 

 


1997年 F50
1997年 F50

ムチュウ

真っ暗な室内でテレビに釘付けになる
画面の向こうで起きている事態について様々な角度から考える

悲しい事件もほんの数分で笑いに変わる
可愛らしい動物が映り
ミサイルについて話し出す
どこかの偉い人間が世の中について熱弁し
青森は雨らしい

22歳の男はどんな結論を出せたのだろうか
夢中になって観ているブラウン管の表面にきれいな花の絵が映る

灰が床に落ちたその時
手には美しいニコチンの花が咲いていた


1998年 F100
1998年 F100

ばった

秋葉原ガード下。

ハンダの臭いがした。

意味の解らない記号が並び、

いかがわしい機材が羅列していた。

コンデンサー

トランジスター

発光ダイオード…

 

半畳もない空間を取り仕切る親父は

何でも知っていた。

図書室で借りたトランシーバーの

回路図を片手に材料を揃える。

大人も子供も入り乱れ

お目当ての部品を探す。

 

何度訪れても心が躍った。

 

しばらくぶりに訪れた。

一帯は家電の店に変わっていた。

 

最近訪れた

パソコン用品の店に変わっていた。

 

現在訪れたれば

メイドが沢山見つかるらしい。


1998年 S100
1998年 S100

一人
目の不自由な子供が歩いてた

彼を見た日
街の理不尽な造りを知った
人も
建物も
音声も
親切な刃物に見えた

当然のように過ごしていた
知ってはいたが解っていなかった

思う自分に
僕が笑う


1997年 F30
1997年 F30

むしかご

絵本の表紙に

本を読む熊の絵が書いてあった。 

その熊が持つ本の表紙にも

本を読む熊の絵が書いてあって、

その中の熊が持つ本にまた

本を読む熊の絵が書いてある

表紙の絵本が好きだった。

 

内容は全く覚えていないが

その合わせ鏡のような

永遠に続いてゆく世界に

心が躍った記憶がある。

・・・

 

キュウリをかじるコオロギを

カマキリが狙っている。

息を潜めてじっと待つ。

蛾の幼虫をアマガエルが

睨んでいる。

もう口から舌が少し出ている。

 

心躍る。

じっと目を凝らす。

箱を見つめる。

 

むしかごには

目を凝らす少年が 一人映っている。

 

 

今私は

鏡をみている。


1998年 F30
1998年 F30

めまい

授業料が足りない

働いても働いても足りない

 

 

イメージが湧かない

考えても考えても湧かない

 

悩みが尽きない

割り切っても割り切っても尽きない

日暮れに気づかない

影が動いても影は動いても

気づかない

見ていて飽きない

過ぎても過ぎても飽きない

モヤモヤした輪郭のなかで
見たもの

          


2001年 2700×1800mm
2001年 2700×1800mm

にらめっこ

 

途方もない

たかが画面だと、ナメてかかれば必ず訪れる時間

途方もない

 

その場を離れたり

ひっくり返したり

開き直ってみたり

 

長い長い

にらみあい

 

 

にらめっこしましょう

ワラウヤツは

負けよ


2001年 900×500mm
2001年 900×500mm

団地1

 

染み付いた風景
団地で生まれ団地で育った私には
19歳までその2DKの間取りが全てだった
同じ造り
同じ風景

『ただいま』
と鉄製の扉を開けると知らない人が
『おかえり』
と自然な返事をくれたおかしな夢

 

100棟ほどある白いコンクリート製住居のなかの自分のその1棟が解らなくなる夢

 

よく見た夢たち

向かいの27号棟には様々な人が住んでいた
外国人
すぐ怒る老人
若い夫婦…

ここで過ごした時間はまだ私の半分以上を形成している

沢山のものと出会いたい

 


2001年 900×500mm
2001年 900×500mm

団地2

 

日本語じゃなかった
顔も
性別も
コロコロと変わっていた


2001年 900×500mm
2001年 900×500mm

団地3

 

すぐ怒るんだ

ここの人
少しだけ社会的にも理解できない部分があったけど
たまに笑ってた


2001年 900×500mm
2001年 900×500mm

団地4

 

若い夫婦が住んでた

喧嘩もしていたな
笑い声もしてたな


2001年 900×500mm
2001年 900×500mm

団地5

  

いつもいないんだ
この家


2002年 7000×2500mm
2002年 7000×2500mm

するめ

 

校舎の吹き抜けから
一階に広げた300枚のパネルを眺める
何が出来上がるかはお楽しみ
四人の合作は六メートルを超えた

自由に組み替えられ
作品の1ピースとなったそれぞれの小作品
風景から人物まで
粉々になって色に変わる

噛めば噛むほど
うま味が広がるもの
見れば見るほど
想像が広がるもの

するめ


東京藝術大学 終了制作 しょんべん横丁 帝京大学 日本画 買い上げ
2002年 2273×1818

うず

 

罵声が聞こえる。

笑い声が聞こえる。

混沌としていて

臭い。

 

これから飛び込む世の中の

酸いも甘いも混ぜこぜの煮込みを流し込んで

体を温めるんだ。

 

良く温まったら

目が回らないようにだけ気をつけて

飛び込もう。

 

 

 

 

 


2014年 M10
2014年 M10

源氏物語絵巻 第三十八帖 鈴虫一 詞 第一紙・第二紙

 

十五夜の夕暮れのころ

女三の宮は仏前で念誦し

鈴虫を放たせた庭にのぞむ端近で

若い尼君たちが花や木を供えて閼伽坏の音をたてたりしている

 

やがて源氏が訪れ

宮とともに経を誦し

親しく語らいながら鈴虫の音に聴き入る…