高田渡

喜怒哀楽の向こうに出会えたような気になる、そんな姿勢で詩を歌う人。


鮪に鰯

作詞:山之口貘/作曲:高田渡

 

 

鮪の刺身を
食いたくなったと
人間みたいなことを
女房が言った
言われてみると
つい僕も
人間めいて
鮪の刺身を夢みかけるのだが

 

ビキニ環礁の近くで鮪漁をしていた船が

被ばくして帰った頃

私はまだ生まれていない。

築地には今も

その時にあげた鮪が地中に埋められてる。
鮪は女房か
鰯は私か
繰り返す歴史
繰り返す過ち

色んなことを、考えさせてもらえる大事な歌。

 

 

 

 

 


生活の柄

作詞:山之口漠 作曲:高田渡

 

 

歩き疲れては
夜空と陸との
隙間に潜りこんで
草に埋もれては
寝たのです
ところ構わず
寝たのです


こんな僕の
生活の柄が
夏向きなのでしょうか
寝たかと思うと
またも冷気に
からかわれて
秋は
秋からは
浮浪者のままでは
眠れない

 

 

人それぞれの生活がある。
バラバラな幸福感がある。
服装も
考えかたも
顔も
バラバラな姿。

今の世の中、少し、みんな似過ぎてはいないだろうか。

 

 

 

 

 

 


ミミズの歌

作詞:永山則夫 作曲:高田渡

 

 

目ない足ないお前はミミズ

真っ暗な人生

何のために生きるの

頭どこ口どこお前はミミズ

話せるものなら

声にして出さんか

 

私がまだ生まれていない頃に

連続ピストル射殺事件を起こし

後に死刑になった

永山則夫さん。

獄中でいくつもの文学作品を書き上げ

たくさんの人が読んだ。

死刑と無期懲役を行き来して

結局死刑。

悪いのは

この人。

いや

生い立ちなのか?

世の中なのか?

 

泣きながら笑ってしまう

そんな感じの歌。

 

 

ニョロニョロ這いずりお前はミミズ

チョロっと遠出して

日干して

果てた

 

 

 


ハッピーニューイヤーブルース

 

新しい年が明けてがんばろう

と思っていたら

いつの間にやら桜の花が散り

こうしちゃおれぬと

腹を決め

 

 

人が思いつきで決める覚悟の

何ともはかなく脆いこと。

でもそんな姿が人だななんて

思ったりして憎めなかったりして。

ここには四季があって

たくさんの節目が身体で感じられるから

ますます人っぽくなってしまうのかな。

 

 

そんなこんなで今年も暮れた

と思っていたら

いつの間にやらオメデトウ

こうしちゃおれぬと

誓いを立てた

新しい年が明けてがんばろう

 

 

 


ウィスキーの唄

作詞作曲:朝比奈逸人

 

 

ウィスキーをおくれ

ウィスキーおくれ

ウィスキーがなけりゃ

夜も明けぬ

 

 

 

アルコール依存症の人の歌か。

それで済まして流してまえないのは

飲ん兵衛の

気が揺れている様から

何か

生きている人には

わかるような何かを

感じてしまうから。

なぜか明日もがんばろうと

思える歌。

 

腹が減ったらウィスキーさ

泳ぎたくなりゃウィスキーさ

ウィスキーウィスキー

殺しておくれ

死ななきゃ死ぬまで

生きてやる