喜怒哀楽の向こうに出会えたような気になる、そんな姿勢で詩を歌う人。
作詞:山之口貘/作曲:高田渡
鮪の刺身を
食いたくなったと
人間みたいなことを
女房が言った
言われてみると
つい僕も
人間めいて
鮪の刺身を夢みかけるのだが
…
ビキニ環礁の近くで鮪漁をしていた船が
被ばくして帰った頃
私はまだ生まれていない。
築地には今も
その時にあげた鮪が地中に埋められてる。
鮪は女房か
鰯は私か
繰り返す歴史
繰り返す過ち
今
色んなことを、考えさせてもらえる大事な歌。
作詞:山之口漠 作曲:高田渡
歩き疲れては
夜空と陸との
隙間に潜りこんで
草に埋もれては
寝たのです
ところ構わず
寝たのです
…
こんな僕の
生活の柄が
夏向きなのでしょうか
寝たかと思うと
またも冷気に
からかわれて
秋は
秋からは
浮浪者のままでは
眠れない
…
人それぞれの生活がある。
バラバラな幸福感がある。
服装も
考えかたも
顔も
バラバラな姿。
今の世の中、少し、みんな似過ぎてはいないだろうか。
作詞:永山則夫 作曲:高田渡
目ない足ないお前はミミズ
真っ暗な人生
何のために生きるの
頭どこ口どこお前はミミズ
話せるものなら
声にして出さんか
…
私がまだ生まれていない頃に
連続ピストル射殺事件を起こし
後に死刑になった
永山則夫さん。
獄中でいくつもの文学作品を書き上げ
たくさんの人が読んだ。
死刑と無期懲役を行き来して
結局死刑。
悪いのは
この人。
いや
生い立ちなのか?
世の中なのか?
泣きながら笑ってしまう
そんな感じの歌。
…
ニョロニョロ這いずりお前はミミズ
チョロっと遠出して
日干して
果てた
新しい年が明けてがんばろう
と思っていたら
いつの間にやら桜の花が散り
こうしちゃおれぬと
腹を決め
…
人が思いつきで決める覚悟の
何ともはかなく脆いこと。
でもそんな姿が人だななんて
思ったりして憎めなかったりして。
ここには四季があって
たくさんの節目が身体で感じられるから
ますます人っぽくなってしまうのかな。
…
そんなこんなで今年も暮れた
と思っていたら
いつの間にやらオメデトウ
こうしちゃおれぬと
誓いを立てた
新しい年が明けてがんばろう
作詞作曲:朝比奈逸人
ウィスキーをおくれ
ウィスキーおくれ
ウィスキーがなけりゃ
夜も明けぬ
…
アルコール依存症の人の歌か。
それで済まして流してまえないのは
飲ん兵衛の
気が揺れている様から
何か
生きている人には
わかるような何かを
感じてしまうから。
なぜか明日もがんばろうと
思える歌。
…
腹が減ったらウィスキーさ
泳ぎたくなりゃウィスキーさ
ウィスキーウィスキー
殺しておくれ
死ななきゃ死ぬまで
生きてやる
…
作詞:ラングストン・ヒューズ
作曲:高田渡
みなさん儂が東京に
来ましたのは素敵と聞いたので
東京に着てから数時間あまり
今にも気でも狂いそう
毎日電車で
ビルの間を自動的に潜り抜け
職場へ向かう人々を
ぼーっと眺めていると
憂さの1つ2つ
吐き出さずにはいられないだろうなと
容易く想像がつきます。
そんな頬杖をつく自分にも
憂さが溜まっていることには
なかなか気づかないものです。
誰でもどこにでも
憂さというヤツは
住んでいて
うまくやっていくしかない。
そう力を抜いてくれる歌。
ちょっと歌ってみたいもの
ほんの儂の憂さ晴らし
ちょっと歌って心の憂さでも
ちょっと歌って晴らしたい
儂が歌っている時は
儂が歌っている時は
儂が歌っている時は
憂さのヤツめが逃げまする