さっきまでたくさんの傘が咲いていた夜の繁華街は
水溜まりと人々で賑やかだった
ネオンが埋めつくす建物の中は
きっと愉しみであふれているだろう
私は水溜まりを飛び越えているところ
次は左足で踏み切ろう
今度は両足て着地してみよう
また雨粒が堕ちて来た
ネオンがゆがむ
傘が咲きだす
私は一人
右
左
右
毎日色々な表情をみせてくれるものは
世の中にいろいろあるものなんだなと思う
時間が変わり
天候が変わり
いつもの土手でまたうずくまる
今日は良い天気だった
風も穏やかで
ゆったりとした一日だった
揺らぐ各駅停車には
どんこう
という呼び名が
ふさわしい
風が止まった
海と陸の呼吸が揃った
朝と夕に一度づつ
凪が来る
すっかり落ち着いた漁船も
遠くに見える細い運河も
ゆっくりと碧の中へ浸ってゆく
まばたきをした後にだけ
暮れている事に気がつくような
ゆったりとした時間
やがて碧は漆黒へと変わり
陸からの風が海へと向かうころ
すべてが眠りにつく
夕凪のあとの風は
全てのイキモノの寝息から
生まれる
花見川と名前が付いてはいるが
正直花のイメージからは掛け離れた川が流れている
サイクリングロードは延々と
50キロ上流まで続いていて
少年の思い切った旅の
行き先だったその道の最後は
ひょうたんのなる
鄙びた畑で終わっている
列車から見ていた川が
それだと気づくまで
すっかり忘れていたが
旅の終りに出会った
あの切ない光景
帰り道はなんと遠く感じた事か
ただ帰りたい
ペダルを漕いだ
秋の夕暮れだった
今
太平洋へ向かって流れる水の上を
直角に 終電が家へ向かう