おはなし二巻 四頁

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53mmのハミング

 

いつからか

ゲリラと呼ぶようになった

少し悪意に満ちてそう呼ばれた

 

私は小さい頃からワクワクする

台風や土砂降りの日は表にでて

川のように変貌したいつもの道路に

笹船やらゴムボールを流して

行き先を見守ったものだ

 

雨が多くて困り

雨が枯れて困り

先行きが見えず困り

幸せ過ぎて困る

こんなに困り続けているのに

困ることには慣れないのだろうか

波風のない空気を

安心と呼ぶのだろうか

 

私はこの波風を吸い込まないと

ハミングができない

 

雨が降ってきた

スキップしながら

進もう


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あめいろのパズル

 

懐かしさって何だろう

似ていることがそのまま直結するわけではなさそうだ

 

楽しかった事を懐かしむとき

苦しかった事も懐かしんでいる

笑いながら少し悲しくなったりする

 

懐かしさ

その引き出しが開いた本当のきっかけが

決まってわからない

 

天気がいいからか

風が気持ち良いからか

少し肌寒いからか

 

幾万の記憶をピースにして

一瞬で組み上がるジグソーパズル

そんな形をしているような気がした


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うたたね

 

綺麗な朝日が差し込んでいても

ついうとうと

枕木のリズムを枕にすると

何故にああもよく眠気に襲われるのだろうか

端っこの座席ならばなおさらだ

住宅を飛び越えトンネルを抜け橋を渡り

うとうと眠る間にも自分は高速で運ばれてゆく

 

綺麗な朝日の中

一日の始まりを森の散歩からはじめる男がいた

橋げたの下を通ったその時

私は通り過ぎるその電車の中で

つい

うとうと

今日も霧雨で霞む風景に目もくれず

つい

うとうとと

うたたねる


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はだしの足音

 

黄色

白のシマシマ

必要以上に名前を主張した

水泳パンツ

バスタオルに水中眼鏡

フーセンガム

 

前カゴに放り込んだら

市営プールへ

あの公園で坂本君も

待っている

彼もガムを噛んでいるはず

思い切りペダルを漕ぐ

 

水から上がった後の

バスタオルは暖かくて気持ちいい

塩素の匂いがたっぷり

染み付いている

更衣室は緑瑠璃色

何百と並んだコインロッカー

誰かが取り忘れた100円玉は

アイスキャンディーに代わる

 

 

少しぎしつく髪の毛を

なびかせたら

ゆっくりとペダルを漕ぐ

夏の昼下がり