おはなし二巻 参頁

M10
M10

ヨモヤマノヨル

 

幾多の分かれ道を下り

突き当たりを登った

日が暮れて街に明かりが灯る頃

もう来た道を辿れないほどの

交差点を曲がって

この高台へたどり着いた

さっきまでバイクで走り続けた

道々を見下ろすと

どこまでも続く沢山の明かりと家々

道や人が広がった

四方見ていて飽きなかった

 

一つ一つの明かりの中で

さまざまな話題を

交わしているのかもしれない

街灯の下でばったりと出くわした

二人が立ち話をしていたり

道一本違えたところで

友人が困っていたりするだろう

その脇で顔の知らない人同士が

すれ違っていたりする

そんな図らずも並び交わり

向かい合い連なり続ける様が

世間というものなのかもしれない

四方山とは上手く言ったものだ

 

さてと

帰る支度をしたその時

私は迷子だった


1450×700
1450×700

帰路線

 

2011年3月10日

この絵が出来た

 

この見下ろした賑やかな町並みを辿って

帰らなくちゃ

どこまでも続く明かりを辿れば

たとえ道に迷っても

帰り着く自信がある

こんなにも明るい夜なんだ

迷うなんて有り得ない

そう思う

 

そう思っていた

何気なく観ていた景色

何気なく感じていた風景

何気なく受け入れる方法を忘れたようだ

 

あの時

筆を置き自分から生まれた作品が

こんなにも大きくなった


S100
S100

生活の柄

 

-高田渡-

 

歩き疲れては

夜空と陸との

隙間に潜り込んで

草に埋もれて寝たのです

ところかまわず

寝たのです

・・・・・・

 

活気ある町

明るい町

涼しい

暖かい

部屋


坂を下る若者

坂を登る母子

テレビを見る

洗濯をする

会話をする

歌をうたう

文章を書く

 

絵を描く

 

2011年夏

節電からいろいろな場所で暗がりが生まれたが

これまでにも増して

『普通』

『安心』

を見つめ直す事が容易くなった気がした

 

幸せの形が皆

なにか似たり寄ったりなのが現代だとするなら

その様式が似たようなものになるのも頷ける

 

全ての家々に明かりが点もる町

ぞろぞろと坂道を下る若者たち

坂を上る母と子

 

私の想う幸せな風景は

これじゃないなと思う

服の柄は皆違うのだ

生活に柄があるならば

こんなに似ているはずはない

 

世の中の柄は

私の服よりセンスが悪い

 

歌いましょう

生活の柄


M10
M10

ヒカリノオカ

 

今はもう出来ない

目を見開き車間をすり抜け弾丸のように突っ走ると

周りの景色は縮み

前方に集まる

夜はなおさらに光と音のみが現れては消えてゆく

 

待ち合わせに遅刻しそうだ

急いで国道を駆け抜けて

記憶もあやふやな歩道橋下を右へ

丘と田畑を抜ければ何とか間に合いそうだ

アクセルを開く

・・・・・

 

スタンドを倒し眺めていた

眼球の左で通り過ぎるはずの帯が今はしっかりと目の前にある

一つひとつの明かりに気配を感じて心地好い

 

一体今まで何幾万の灯を駆け抜けて来たろうか

ひたすら前を見て走ってきた

だいぶ目も悪くなった

・・・・・

 

エンジンに火を入れ

待ち合わせ場所に向かう私は

遅刻をした