おはなし一巻 六頁

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ダンス

 

さっきまでたくさんの傘が咲いていた夜の繁華街は

水溜まりと人々で賑やかだった

ネオンが埋めつくす建物の中は

きっと愉しみであふれているだろう

 

私は水溜まりを飛び越えているところ

次は左足で踏み切ろう

今度は両足て着地してみよう

 

また雨粒が堕ちて来た

ネオンがゆがむ

傘が咲きだす

 

私は一人


M10
M10

どんこう

 

毎日色々な表情をみせてくれるものは

世の中にいろいろあるものなんだなと思う

 

時間が変わり

天候が変わり

いつもの土手でまたうずくまる

 

今日は良い天気だった

風も穏やかで

ゆったりとした一日だった

 

揺らぐ各駅停車には

どんこう

という呼び名が

ふさわしい


F15
F15

夕凪


風が止まった
海と陸の呼吸が揃った

朝と夕に一度づつ
凪が来る

すっかり落ち着いた漁船も
遠くに見える細い運河も
ゆっくりと碧の中へ浸ってゆく

まばたきをした後にだけ
暮れている事に気がつくような

ゆったりとした時間
やがて碧は漆黒へと変わり
陸からの風が海へと向かうころ
すべてが眠りにつく

夕凪のあとの風は
全てのイキモノの寝息から

生まれる


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最終電車

 

花見川と名前が付いてはいるが

正直花のイメージからは掛け離れた川が流れている

サイクリングロードは延々と

50キロ上流まで続いていて

少年の思い切った旅の

行き先だったその道の最後は

ひょうたんのなる

鄙びた畑で終わっている

 

列車から見ていた川が

それだと気づくまで

すっかり忘れていたが

旅の終りに出会った

あの切ない光景

帰り道はなんと遠く感じた事か

 

ただ帰りたい

ペダルを漕いだ

秋の夕暮れだった

 

太平洋へ向かって流れる水の上を

直角に 終電が家へ向かう