おはなし一巻 九頁

1150×1150
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あゐゐる


重ね方で
青が
黒や深緑に 変わる絵の具がある
昔から使われてきたその染料は溶いた 指も筆も紙も
青くしてしまう

日本藍





全て
深い色に

包まれていた

それだけの理由が
材料を選ばせた

幾度の冷や汗
次を生む
苦し楽し
あゐゐろ

 

あゐゐる


M20
M20

ためいき

 

毎日まいにち
家と職場を行き来する人々
次々と扉の中へ足を踏み入れてゆく
そこかしこで吐き出されるためいき
吐き出してまた
次へ進む

毎日まいにち
水がゆらいでいる


1450×700
1450×700

まほろば

 

東京近郊を転々としている
埼玉に住みはじめた頃
海も山もない土地をあてなく走っても
ただ平らな大地が果てしなく続いた

私に何も入らないその風景は退屈そのもので
見たものが頭の後ろから
すぐに遠ざかっていった
やがて
自分の理想的な場所とは一体どんなところか考えたが
全く見当がつかないまま
再び引越しの準備に入っていった
思い出してみれば
どこにいても
飽きる度に去る事を
繰り返している

どっしりと腰を据え
変わってゆく事を受け入れ
生き続けたものたちは
風景になる

私が
まほろばに出会う頃には
私自身に
懲り懲りしていることだろう

綺麗な青空に
大きな入道雲が一つ
聳えている
外し忘れたカーテンが
丸く風を抱え
すぐに放した

さようなら埼玉
こんにちは神奈川


M3
M3

箱の中の人

 

箱の中の人
目だけ開いてる
僕は回ってる
だけど止まってる
僕は無口になる
それも僕だから
なんてつまらない
なんて落ち着かない
君は細かくもなく
一つにも見えない…

『箱の中の人』
(滝本晃司)より