おはなし一巻 七頁

M30
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Water Express

 

空港からは今日も

今も

季節を飛び越え飛行機が飛んでいく

 

アタッシュケースに

トランクに

沢山の想いを詰め込んで

空港へ向かう人々が見えた

 

座席に座る疲れたサラリーマンは

羨ましそうに

恨めしそうに

紅いスカーフを睨み

車内を行ったり来たりするビールの缶には

関心がない

 

何百もの

人々は家路に着き

飛行機は飛び立ち

缶は捨てられ続けている

 

人々を乗せたline

黒い水面を飛ぶ


M30
M30

ラムネの秘密

 

シュワシュワとこぼれ出す

慌てて口元に運べばコカラコカラとビー玉が遊ぶ

小学校脇に在った和光堂という駄菓子屋が

僕らの少ない小遣いの使い道だった

 

今まで沢山の事があった

泡の数ほど

花の数ほど

沢山の事があった

 

そんなことを想わせた風景の向こうには

まだまだ沢山の事が待っているのだろうか

 

丁寧に踏み潰しながら

向かう


2150×1700
2150×1700

其其の雨音

 

厚い雲に覆われた向こう側には

きっと星空が輝いている

飽きずによく降り続ける雨

世の中全てが湿っぽい

 

交差点は青と赤を繰り返して

しましまの橋を渡らせる

とおりゃんせのメロディーと

雨が織り交ぜるハーモニー

すぐにまた雨音に戻る

其々の頭の中はばらばらに過去も未来も行き来する

 

今日の体育最悪だった

タクシーこないなぁ

パチンコでもやっていこうか

夕食は何にしようかしら

 

現れてはすぐ消える無数の轍

ばらばらに


1445×700
1445×700

冬の蝉

 

夢の間

冬の光

確かに

鳴いていた

寒い朝