おはなし一巻  壱頁

1800×600
1800×600

R16

 

国道を走る乗り物は全て

路地裏で見るものとは

まるで違う。


凶器に見えてしまうほど

その塊は

早い。

 

パンでもかじりながら

ハンドルを間違えたトラックは

いとも容易く

歩道を貫く。

 

だのに、

車も

人も

慣れてしまっているから、

その走る様も

綺麗に見えたりするのだろうか。

 

行ったり来たり

止まったり曲がったり

 

高速で消え去るヘッドライトの軌跡が

綺麗だなと思った。


国道16号線

 

怖くも 美しい。


F100
F100

ばった

 

秋葉原ガード下。

ハンダの臭いがした。

意味の解らない記号が並び、

いかがわしい機材が羅列していた。

コンデンサー

トランジスター

発光ダイオード…

 

半畳もない空間を取り仕切る親父は

何でも知っていた。

図書室で借りたトランシーバーの

回路図を片手に材料を揃える。

大人も子供も入り乱れ

お目当ての部品を探す。

 

何度訪れても心が躍った。

 

しばらくぶりに訪れた。

一帯は家電の店に変わっていた。


最近訪れた

パソコン用品の店に変わっていた。


現在訪れたれば

メイドが沢山見つかるらしい。

 


F30
F30

むしかご

 

絵本の表紙に

本を読む熊の絵が書いてあった。 

その熊が持つ本の表紙にも

本を読む熊の絵が書いてあって、

その中の熊が持つ本にまた

本を読む熊の絵が書いてある

表紙の絵本が好きだった。


内容は全く覚えていないが

その合わせ鏡のような

永遠に続いてゆく世界に

心が躍った記憶がある。

・・・

 

キュウリをかじるコオロギを

カマキリが狙っている。

息を潜めてじっと待つ。

蛾の幼虫をアマガエルが

睨んでいる。

もう口から舌が少し出ている。

 

心躍る。

じっと目を凝らす。

箱を見つめる。

 

むしかごには

目を凝らす少年が 一人映っている。


 

今私は

鏡をみている。


F30
F30

めまい

 

授業料が足りない

働いても働いても足りない

 

 

イメージが湧かない

考えても考えても湧かない

 

悩みが尽きない

割り切っても割り切っても尽きない

日暮れに気づかない

影が動いても影は動いても

気づかない

見ていて飽きない

過ぎても過ぎても飽きない

モヤモヤした輪郭のなかで
見たもの