2011~2018

私の好きなものの一つに、夜の街並みがあります。

一つ一つの街明かりに人々の存在を感じます。 ここには夜の街を描いた作品が掲載されています。


JERK

2018年 M8
2018年 M8

      陽射しが気持ち良い。

目の前に海が広がる。

鳥も、山も、島も空も見える。

心地よいカウンターでは

大切で綺麗な思い出を

作っている人々の笑顔。

とても穏やかな風景。

 

 

毎日、その顔色を変える海。

 

嵐が迫り

目の前の海が荒れ果て

島も山も何も見えない日。

 

そんな日も

心地よいカウンターの中で

この店を守ってきた人がいる。

 

 

少し日が傾いてきた。

生シラスたちが嬉しそうに

私に食べられた。

 

ごちそうさまでした。

 

 

蜜ト鱗粉

2015年 1450x700mm
2015年 1450x700mm

 

花に集まる生き物には羽のはえた

輩もいます

 

水をはじく毒の粉で

描かれた美しい絵柄ヲ

その羽二

刻んで

あちこちの

蜜ニ

集マリマス

 

ユラユラと

空気ノ間を

潜リ

漂ウ

姿ヨ

 

ゆらゆら

どこヘ

往ク

 

フラフラ

ドコ

・ 

・ 

 

 

 


2016年 M10
2016年 M10

 

誰かと出会って

何かを語らって

いつかを思い出して

何かを笑い飛ばして

 

明日の

何かに変えて

明日も

何かに変えて

明日を

何かに変えて

 

集まり

集める

 

 

 

Take Your Time

2017年 M8
2017年 M8

 

カウンターの

あちらと

こちらで

形を変えて

行き来する

あなたへの

プレゼント

 

ごゆっくり

 

 

 


アイスルモノ

2013年 M10
2013年 M10

 

僕ニハ

欲シイモノガ

何モナイ

 

貧乏ダケド

貧シクナイ

 

海ヲ見テ

山ヲ歩イテ

 

命ノ器ヲ

スキナコトデ

 

埋メ尽クス

 

欲シイモノハ

ナニモナイ

 

コノママデ

イタイ

 

 

 

アイサレルモノ

2013年 M10
2013年 M10

 

私ニハ

欲シイモノガ

山ホドアル

 

豊カニナリタイ

幸セニナリタイ

 

緑ニ囲マレ

ナニ不自由ナク

 

長生キヲシタイ

 

欲シイモノガ

山ホドアル

 

コノママデ

イタクナイ

 

 

 


2013年 M6
2013年 M6

 

タッタ一夜ノ命

 

 

 

2013年 M6
2013年 M6

 

塊ニナッテ

浮遊スル

 

ソレハ

魂ニナル

 

 

 


2013年 M6
2013年 M6

 

ヤブヲモ

枯ラス

ソノ

チカラ

 

カラミツケ

 

 

 

2013年 M6
2013年 M6

 

捩レテモ

開イテモ

ヨリ高ク

 

 

 


想望

2015年 F6
2015年 F6

新生

2015年 M6
2015年 M6

 

あなたの門出

日を追い

老いてく

絵を

描いた

 

この子が

くろぐろ

くたびれるまで

いついつまでも

初心です

 

 

 


春月小唄

2017年 2150×1700
2017年 2150×1700

 

しとしと雨が止んだなら

ウキウキ準備は万端で

青空見えてきたならば

急いで急いで大きくなっちゃう

綺麗に錆を落としたコイツで

走って登って川を渡って

 

ブルルンブルルン

グツグツグツグツ

リュックパンパン

鍋沸かせ

 

あちらこちらで新芽が育って

一面若葉になる日まで

わたしと真昼のおつきさん

 

ブルルンブルルル

グツグツボコボコ

リュックパツパツ

ナベハコガスナ

 

一面若葉になる日には

わたしも真昼のお月様

 

 

 

化粧ヲスル。

2017年 1450×700mm
2017年 1450×700mm

 

レトロな椅子に腰かけて

何やら

慣れた手つき

 

塗って

触って

叩いたり

馴染ませたり

 

適当なのか

的確なのか

 

だんだんと

 

見慣れたような

見慣れないような

顔ができあがる

 

眺めながら

私は

 

いろんなことを

わからないでいる

 

 

 


蒼ノ食卓

日本画 院展 箔 箔画 箔絵 近藤仁 空翠会
2018年 2150×1600mm

 

蒼々とした草木は

 

やがて金色になって

その実や根や幹だけ残します。

 

海の中は春のようなもの。

色んな生き物が育ちます。

 

そうしてやがて

海の中から

がやって来て

陸は再び

蒼くなります。

 

 

私は

夜7時に間に合うよう

料理を作ります。

あくを抜き、皮を剥き

蒸したり焼いたり茹でたりして

食卓を準備します。

 

どれもこれも

あの蒼い風景から頂いたもの。

食べる分だけ頂いたもの。

明日は

ワカメの酢の物。

 

イタダキマス。

 

 

触発

2018年 1450×700mm
2018年 1450×700mm
ちょっと触る
少し触れるだけで
感触を確かめる間もなく
走る痛み
囲まれて
絡まっても
かき分けて見つけた
そんなふうに
走り始めたら
切り傷や
かすり傷なんか
気にならないもの
ちょっと痛いだけ
そして
ちょっと楽しいだけ
ほらまた
血が出ちゃったな

興夜

2019年 1450×700mm
2019年 1450×700mm
 

あんなもの

こんなもの

頁を捲るたび

静かに

ふけてゆく

 

 

 

つめたいふね

2017年 M10
2017年 M10


誰もいない湊。
退職した船はじっとしている。
雨の日も晴れの日も
波を越え
氷を砕き
真っ白な世界を目指した彼。

そこで何を見てきたのだろう。
今は何を見ているのだろう。

豪雨の中
びしょびしょの僕らは
黙ったまま
少しニヤニヤしながら
話をする。

 

 

 

源氏物語絵巻 第三十八帖 鈴虫一 詞 第一紙・第二紙

2014年 M10
2014年 M10

 

十五夜の夕暮れのころ。

女三の宮は仏前で念誦し、

鈴虫を放たせた庭にのぞむ端近で、

若い尼君たちが花や木を供えて、

閼伽坏の音をたてたりしている。

 

やがて源氏が訪れ、

宮とともに経を誦し、

親しく語らいながら鈴虫の音に聴き入る…

 

 

 


2015年 M8
2015年 M8

 

暮レテユク
タダ暮ラス
タダ暮シテユク
タダ暮シテイルダケ
ソレダケデ

 

 

 

夢雨 -ムウ-

2013年 M8
2013年 M8

 

よく見えない。

埠頭に向かう大きな橋から
目を凝らす。


思い出す
変な夜。

晴れた日に再び訪れれば

見慣れた街。


おかしいなと

夢の続きを見に
眠りに行くが、
なかなか
出会えない
そんな風景。

思い出せない
夢のような
雨だった。

 

 

 


53mmのハミング

2011年 2150x1700mm
2011年 2150x1700mm

 

いつからか

ゲリラと呼ぶようになった

少し悪意に満ちてそう呼ばれた

 

私は小さい頃からワクワクする

台風や土砂降りの日は表にでて

川のように変貌したいつもの道路に

笹船やらゴムボールを流して

行き先を見守ったものだ

 

雨が多くて困り

雨が枯れて困り

先行きが見えず困り

幸せ過ぎて困る

こんなに困り続けているのに

困ることには慣れないのだろうか

波風のない空気を

安心と呼ぶのだろうか

 

私はこの波風を吸い込まないと

ハミングができない

 

雨が降ってきた

スキップしながら

進もう

 

 

 

あめいろのパズル

2012年 1450×700mm
2012年 1450×700mm

 

懐かしさって何だろう

似ていることがそのまま直結するわけではなさそうだ

 

楽しかった事を懐かしむとき

苦しかった事も懐かしんでいる

笑いながら少し悲しくなったりする

 

懐かしさ

その引き出しが開いた本当のきっかけが

決まってわからない

 

天気がいいからか

風が気持ち良いからか

少し肌寒いからか

 

幾万の記憶をピースにして

一瞬で組み上がるジグソーパズル

そんな形をしているような気がした

 

 

 


うたたね

2011年 2150×1700mm
2011年 2150×1700mm

 

綺麗な朝日が差し込んでいても

ついうとうと

枕木のリズムを枕にすると

何故にああもよく眠気に襲われるのだろうか

端っこの座席ならばなおさらだ

住宅を飛び越えトンネルを抜け橋を渡り

うとうと眠る間にも自分は高速で運ばれてゆく

 

綺麗な朝日の中

一日の始まりを森の散歩からはじめる男がいた

橋げたの下を通ったその時

私は通り過ぎるその電車の中で

つい

うとうと

今日も霧雨で霞む風景に目もくれず

つい

うとうとと

うたたねる

 

 

 


逢ワセ鏡

2017年 M6
2017年 M6

海の側にある

遊園地。

水面にも

遊園地。

 

初々しい二人が

ゆっくりと坂を登り始めた。

景色は徐々に

遠くまで繋がりだす。

 

手に汗握る側と

にこにこ笑う側が

隣り合わせで座り

山の頂点で止まった。

 

歯を喰いしばる側と

笑いが止まらない側。

 

猛スピードで

乱高下を繰り返す。

 

下り終えると

ほっとする側。

がっかりする側。

 

また坂にさしかかると

次の準備をする側。

わくわくが始まる側。

 

登り始めると

また

手に汗握る側と

にこにこ笑う側。

 

ここは

海の側にある

遊園地。

水面に映るも

 

遊園地。


シアワセノホシ

2015年 M20
2015年 M20

 

この夜景を忘れない。

 

ここから帰る途中

何度消えた信号機を潜ったか。

テールランプの帯をかい潜り

蛇行する山道を登り降り

映りの悪いワンセグが繰り返す北の大地の名。

 

怖いのか

楽しいのか

気持ちの居所が解らなかった。

 

深夜、見慣れた玄関の扉を開けた向こうには、

いつものまま

ねじれて眠る猫がいた。

 

幸せは

なるものでなく

感じるものだと、

あの夜景を

描こうと思った。

 

 

 

帰路線

2011年 1450×700mm
2011年 1450×700mm

 

2011年3月10日

この絵が出来た。

 

この見下ろした賑やかな町並みを辿って

帰らなくちゃ。

どこまでも続く明かりを辿れば、

たとえ道に迷っても

帰り着く自信がある。

こんなにも明るい夜なんだ。

迷うなんて有り得ない。

そう思う。

 

そう思っていた。

 

何気なく観ていた景色

何気なく感じていた風景

何気なく受け入れる方法を忘れたようだ。

 

あの時

筆を置き自分から生まれた作品が、

こんなにも大きくなった。

 

 

 


夢現

2012年 2150×1700mm
2012年 2150×1700mm

 

300Mを越えるこの塔を

人間の手が組み上げた。

 

目の眩むようなこの眺めで
造られた都市の形を知った。

未だ
創造を生業とすることが叶わない自分と
この今の都会を重ねて、
夢と
現が

混ざったものを、
遠く人智を越えた青色い造形物に見た気がした。

 

 

 

虹時

2014年 M10
2014年 M10

 

明かりが灯り 街になる
西から東へ
北から南へ
道は冷たく続く

僕が眠る頃
愉しげな光は集まった
悲しげな光は行き過ぎた

そうして
こうして
トウキョウは
虹時

 

 

 


雨々

2015年 M10
2015年 M10

 

はじめは しとしと

そのうち ポツポツ

だんだん パラパラ

いよいよ ざあざあ

夏の雨

秋の雨

トウキョウ
さめざめ

 

 

 

時雨

2015年 M10
2015年 M10

 

震災以降

私は

美しさや

綺麗さを

感じられなくなっていた。
こんな時代だからこそ必要なはずなのに

感じない。
今まで無意識だった当たり前だった事が

解らなくなった。

スカイツリーが完成する。
東京タワーがその役割を終える。
正式名称は日本電波塔。
長い間東京のシンボルだった。

ある日高速を降りた時、

その電波塔に雨が降っている風景が広がった。
久しぶりだった。
12月のことだった。

 

綺麗だと思った。
色んな事が変わるんだと気がついた。
本来の言葉の意味とは違うけれど
『時雨』

という絵を、

描こうと思った。

 

 

 


スミカ

2013年 1450×700mm
2013年 1450×700mm

 

水のなかで広がった紫の雲と
広がった水浅黄色の手

 肥大し続けた身体には
 守る役目をわすれた

小さな貝殻の名残

無造作に浜辺で寝転がっているけれど

 昔々からここを住処にしてきたんでしょ?
 
これから仲良くしよう
雨虎
 

君と僕は
 アメヲヨブ 

 

 

 

富ノ遺産

2013年 2150×1700mm
2013年 2150×1700mm

 

世界遺産が見える丘から

異国のような町が広がる。

形も

色も

人も

きれいに整っている様と

昔からあったような錯覚を

見せつけてくる。

 

大きなもの

ちいさなもの

きれいなもの

きたないもの

残したくないもの

のこしたいものも

 

すべては

遺産になると

尾根が言う。

 

 

 


都雨

2016年 M10
2016年 M10

 

日が

暮れて

 

空が

雲で

覆われて

 

やがて

雨が

降りだして

 

土から

遠く

離れた

人たちの

営みが

 

霞んで

見えなくなりました

 

 

 

夜虹

2017年 M6
2017年 M6

虹を見る前は決まって雨が降る。

虹を見るときは決まって太陽がいる。

 

稲妻

突風

積乱雲

 

全て

昼も夜もお構い無しだ。

 

この日の名古屋は

猛雨か

激雨か

 

夜にも虹が出るのだと
思い込んでみたら

雨で乾いた心が

みるみる潤ったので

震えながら見た夜中のビル群に

虹が見えた

・・・気がした。

 

 

 


2017年 M10
2017年 M10

 

ここには早い夜がある。

僕らとは違うリズムで
水平線へ向かう支度をする。
空と話し、風を聴いてから
エンジンに火を入れ
闇へ消えて行く。

夕暮れ前は
薪を囲んで
語らう真っ黒な男たちが
海を見ながら
呑んでいる。

ここには早い夜がある。
しばらくするとまた
エンジンが音を点て
闇へ消えて行く。

 

 

 

南風

2017年 M10
2017年 M10

 

ついさっきまで東京を眺めていた山のてっぺんから

生ぬるい風に誘われて

反対側へやってきた。

 

真っ黒な海から吹いてくる

それは

見覚えのある景色を

見慣れないものに

変えてしまう。

 

架かる橋が

記憶と重なるまで

暫く時間がかかった。

 

心地よくなかった。

 

 


熱帯夜

2017年 M10
2017年 M10

からだのまわり

 

そこいらじゅう

 

まちのすみずみ

 

あのまちこのまち

 

うえからしたまで

 

にげられず

 

あきらめる

 

 

 

2014年 2150X1700
2014年 2150X1700

山間に

女たちが集った町には

異国の人々とともに

つくられた

おぼろげな

気配がある

 

七夕の日

 

年に一度会えるのだから

幸せ

 

でも

今年は少し

霞んでいる

 

おや

催涙雨

 

そうか

また来年

 

 

 


ムカシムカシ

2016年 1500x750mm
2016年 1500x750mm

 

 

むかしむかし

あるところに

おにいさんと

おねえさんが

こよなく愛した

呑処がありました。

 

おにいさんは

山菜のおひたしと

レバ刺しに

砂肝

 

おねえさんは

川海老の唐揚げと

鳥刺しに

つくね

 

おねえさんが

川海老を箸で摘まんでいると

ドンブラコ

ドンブラコと

大きな鍋物が運ばれてきました。

 

「おや、これはまた」

 

おにいさんと

おねえさんは

美味しそうに

食べました。

 

 

 

とても天気のよい昼下がり

おじいさんと

おばあさんの

目は、

広い広い駐車場を

見つめています。

 

「ムカシはなぁ……」

 

「ムカシはねぇ……」

 

 

 

moneyquin

2015年 2150x1700mm
2015年 2150x1700mm

 

たくさんの欲望に

火をつけるため

私たちは着飾っております。

 

あなた方が

私たちを見て

私たちと比べて

私たちに憧れて

お似合いの洋服を

お探しになるうち

あれも欲しい

これも欲しいと

なるわけです。

 

ですから

少し悲しくなることもあるけれど

私たちは

いつも同じ姿勢で

いつも同じ表情で

お店の前に立つのです。

 

それでいいのです。

それがお仕事です。

たくさんお買い求め下さい。

どんどんお買い求め下さい。

 

あなた方が

私たちのようになるまで。

 

 

私たちが欲しいもの

それは

左手です。

 

 

 


烏 ‐

2014年 1450×700mm
2014年 1450×700mm
なんの約束も
決まりもなく
カラスと鷺が
寄り集まっては
泣きながら
七つの子のもとへ
帰ります。
太陽の中にはカラス 
月の中にはウサギがいて
それぞれが
毎日
大空から
見守っています。
 
不自然な
自然を
街と呼ぶように
なったけれど
 
本当は
そこには
何もないのです。
 
流れているのは
月日です

村雨

日本画 院展 箔 箔画 箔絵 近藤仁 空翠会
2016年 2150×1700mm

 

初めて昇った

高い塔から見えたのは

ちぐはぐな霞み方をした

光でした。

 

西の方から段々と

ぼんやりが広がっても

反対側の

星空のような街は

堂々としていました。

 

見渡せたことのない

大きな風景には

人と自然が

ただただ

ひしめき合っていて

ひとしきり降っては

止む雨を

ぼーっと眺めておりました。

 

 

冗談のようでも

恐ろしく真面目な

鈍く

鋭い光が

街でした。

 

 

 



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